相続税という言葉に、漠然とした不安を抱く方は少なくありません。「相続税がかかるのは一部の富裕層だけ」というかつての常識は、2015年の基礎控除引下げ以降、過去のものとなりました。現在、相続税の申告が必要な被相続人の割合は、全国で約9パーセント前後、都市部ではそれ以上に達しています。
相続税の基礎控除
相続税には、基礎控除と呼ばれる非課税枠があります。計算式は、3000万円 + 600万円 × 法定相続人の数、です。たとえば、配偶者と子2人が相続人であれば、3000万円 + 600万円 × 3 = 4800万円が基礎控除額となります。遺産総額がこの金額以下であれば、相続税の申告も納税も不要です。
相続税の計算の流れ
第一に、遺産総額を算出します。現金・預金・不動産・有価証券・生命保険金・死亡退職金などを評価額ベースで合計し、そこから債務・葬式費用を控除します。第二に、基礎控除を差し引き、課税遺産総額を求めます。第三に、課税遺産総額を法定相続分で按分し、各人ごとに税率を適用して相続税の総額を計算します。第四に、算出された相続税の総額を、実際に取得した遺産の割合に応じて各相続人に振り分けます。第五に、各相続人ごとに税額控除を適用し、納付税額を確定します。
相続税の税率
相続税は超過累進課税です。1000万円以下は10パーセント、3000万円以下は15パーセント、5000万円以下は20パーセントと段階的に上がり、最高税率は6億円超で55パーセントに達します。
配偶者の税額軽減
配偶者には大きな保護があります。取得した遺産のうち、法定相続分または1億6000万円のいずれか大きい金額までは、相続税がかかりません。ただし、これは申告することが適用の条件です。
小規模宅地等の特例
被相続人の自宅の土地や、事業用の土地について、一定の要件を満たせば、評価額を最大80パーセント減額できる制度です。自宅の土地であれば、330平方メートルまでの部分について適用されます。この特例の活用可否で、相続税額が数百万円単位で変わることも珍しくありません。
生前贈与の扱い
2024年以降、相続開始前7年以内の贈与は、相続財産に持ち戻して課税されるルールに段階的に移行しています。暦年贈与による相続税対策は、時間をかけた計画的な実行が前提となりました。
節税よりも、まず正確な把握を
相続税対策は、本来、税金を減らすこと自体が目的ではありません。家族に何を残し、どう承継したいのかを定めたうえで、結果として負担を適正化する作業です。まずは、現時点の遺産総額と税額を正確に把握すること。それが、あらゆる対策の出発点です。
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