遺言書は、自分の意思を家族に静かに届ける最後の手紙です。相続トラブルの多くは、遺言書が存在しないか、存在しても要件を欠いて無効になっているために生じます。民法が定める遺言書の種類は3つ、それぞれに性格が異なります。
自筆証書遺言
自筆証書遺言は、遺言者が全文・日付・氏名を自書し、押印して作成する遺言書です。2019年の民法改正により、財産目録部分のみ、パソコンで作成したり、通帳のコピーを添付したりすることが認められました。本文は依然として自書が必須ですが、財産目録の作成負担は大幅に軽減されています。
メリットは、手軽に、費用をかけずに作成できること、内容を秘密にできることです。デメリットは、要件を1つでも欠くと無効になること、紛失・偽造・隠匿のリスクがあること、そして原則として家庭裁判所の検認手続きが必要なことです。
2020年7月から、法務局における自筆証書遺言書保管制度が始まりました。この制度を利用すれば、法務局が遺言書を保管するため、紛失・改ざんのリスクがなくなり、相続発生後の検認手続きも不要になります。手数料は1通3900円と低廉です。
公正証書遺言
公正証書遺言は、公証役場において、公証人が遺言者から内容を聞き取り、証人2名の立会いのもとで作成する遺言書です。法律の専門家である公証人が作成するため、要件不備で無効となるリスクが極めて低く、原本が公証役場で厳重に保管されます。検認手続きも不要です。
デメリットは、公証人手数料がかかること(遺産額に応じて変動)、証人2名を確保する必要があることです。信頼性と実行力を最優先するのであれば、公正証書遺言が最も安心できる選択です。
秘密証書遺言
秘密証書遺言は、遺言者が作成した遺言書を封入した上で、公証人と証人2名の前に提出し、自分の遺言書であることを申述する方式です。実務上はほとんど使われていません。
遺言能力と認知症
遺言を有効に作成するには、遺言能力が必要です。重度の認知症などで判断能力が失われている場合は、作成した遺言が無効となる可能性があります。判断能力に不安が見え始めたら、早めに公正証書遺言を作成し、必要に応じて医師の診断書を併せて保管しておくと、争いの予防につながります。
遺言書は、書き換えてよい
遺言書は、何度でも書き換えることができます。後に作成された遺言書が、前の遺言書と抵触する範囲で、前の遺言書を撤回したものとみなされます。家族構成や財産状況が変われば、それに応じて遺言書も更新してよいのです。
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