遺産分割は、相続手続きのなかでも、最も家族の感情が交錯する場面です。数字だけの問題であれば理屈で解決できますが、遺産分割には、生前の親子関係、兄弟姉妹の経済状況、家業の承継、親の介護負担の不均衡など、長年の感情が入り交じります。
第一段階: 遺産分割協議
遺産分割は、まず相続人全員での話し合いから始まります。「全員」の合意が必要だという点が重要です。1人でも欠けた協議は無効で、後日その相続人から分割のやり直しを求められる可能性があります。
協議に先立って、相続人の範囲と遺産の範囲を確定する作業が必要です。戸籍をさかのぼって相続人を確定し、預金・不動産・有価証券・負債まで含めて遺産目録を作成します。
分割の4つの方法
現物分割(個々の財産をそのまま分ける)、代償分割(特定の相続人が財産を取得し代わりに金銭を支払う)、換価分割(財産を売却して現金化し分配する)、共有分割(複数の共有名義にする)の4種類があります。共有分割は将来の管理・売却に支障をきたしやすいため、実務上は最後の手段とされます。
特別受益と寄与分
特別受益とは、相続人が生前に被相続人から受けた特別の贈与を指します。相続の前渡しと考え、遺産に持ち戻して相続分を計算するのが原則です。寄与分とは、相続人が被相続人の財産の維持・増加に特別の貢献をした場合に認められる増額分です。いずれも相続開始から10年の期間制限があります。
第二段階: 遺産分割調停
協議で合意に至らない場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。中立的な調停委員が双方の主張を聞きながら合意点を探ります。相続人同士が直接顔を合わせる必要はありません。調停は1か月に1回程度のペースで進み、平均して半年から1年を要します。
第三段階: 遺産分割審判
調停が不成立に終わると、手続きは自動的に審判へ移行します。裁判官が法定相続分を基準に分割方法を決定します。ここに至ると、当事者の意向よりも法的判断が優先されます。
10年の期間制限
2023年の民法改正で、相続開始から10年を経過した遺産分割では、特別受益と寄与分の主張が原則としてできなくなりました。放置された遺産分割は、時間とともに選択肢を失います。早期の協議着手が、あらゆる意味で有利です。
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